2011年7月4日月曜日

アートへの関わり方

わりと気軽に見に行ける展示はないのかな? と思って調べているうちに、私が今まで考えていたホスピタルアートとは違った形のものを見つけました。
今回はその違いから今後のアートへの関わり方について考えてみたいと思います。

私が最初に見たホスピタルアートは、芸術家の方が病院に入って行くという形でアートとして成り立たせており、単純に「病院でアート作品を見ることができる」のがホスピタルアートなのだと考えていました。以前見てきた森口ゆたかさんの展示も、徳大病院のホスピタルギャラリーもその領域です。
しかし2010年の香川小児病院におけるホスピタルアートでは、写真家である森合音さんという方が中心となり、入院患者さんも一緒に壁に絵を描いて作品を完成させていました。これは今まで私が考えていたものとは違うなと思いまして。

何が違うかというと、前者は受動的なのに対して、後者が能動的である点です。
ホスピタルアートという言葉自体まだ知名度が低く、作品の数も少ないですが、私が見た限りでは基本的に受動的なものが多いように思います。
実際、誰が制作を行っているかというと、芸術大学の学生や講師であったり、もしくは地元の芸術家やボランティアの方々であったり、患者さんはアートというものを提供されている状態です。

ここで一言つけたしておきますが、受動的な展示形態が悪いということではないです。参加するより見るのが好きという人もたくさんいると思いますし。
制作がどういう形で行われるかというのは、病院側がどういった目的でホスピタルアートを行おうと思ったかにもよるのではないかと思っています。

展示場所に注目すると対象者や目的がなんとなく分かるのではないかと。
例えばロビーは患者さんだけでなく、お見舞いや付き添いに来た人も気軽に見ることができます。これは待ち時間を快適にすること、病院に対するイメージアップが考えられる。治療室の場合も機械に装飾するなど、これも冷たい機械の印象を払拭するといった意味合いが強い。また展示室、所謂ホスピタルギャラリーという形態をとっている場合、地元の作家さんの展示を中心にしていることが多く、地域との密着にも重点を置いているように感じます。
さらにこれらの展示が玄関から奥になるほど、病院への関わりが強い人のためのものと言えます。

最初は病院という空間の快適さを求めるものだったのが、次第に地域の方との交流へと広がり、さらに患者さん自身が参加することで自分で自分の心を癒していけるように、ホスピタルアートも多様化してきているのではないかと思いました。

去年LEDアートフェスティバルに参加してきましたが、展示形態として、イベント参加者自身が作品の一部になったり、参加者も作品づくりに携わるといった体験型のアート作品というのがありました。観光として地域とアートが一体化しているものなど、近年、体験型アートは増えてきているように思います。
この先、ホスピタルアートも入院設備のある病院を中心に患者さんと一緒に作品を作っていくものも増えてくるのではないかなと。
病院にいてもアートに参加できるというのは、誰もが楽しめる芸術を目指す上で大きな意味があるように感じます。


と、ここまで説明するのに伝わりやすいと思ったので「作品」という言葉を使ってきたのですが、私の方がホスピタルアートを作品と呼ぶのに違和感がありまして。
芸術としては作品で良いんですが、単なる作品の展示でなく、病院にアートを加えて創られた環境を果たして作品という言い方で括っていいのだろうかと思ってしまう。

自分でもなんでだろうと思ってここしばらく考えてたのですが、芸術そのものに対するイメージが関係しているのかもしれないですね。
ずっと娯楽として展示を見に行くという接し方を続けてきたので、娯楽としての芸術作品と医療を組み合わせてしまって違和感を感じている気がする。もっと芸術に対して様々な面があることを理解して、柔軟に受け入れていかねばと思います。


参考:
artsproject(2011/07/04)
http://www.arts-project.com/hospitalarts/project/project16/index.html

日テレNEWS24 心の薬「ホスピタルアート」香川・善通寺市(2011/07/04)
http://www.news24.jp/articles/2010/02/18/07153795.html

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